心疾患の治療改善につながる『ミトコンドリア移殖』

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美容や健康・長寿といった内容を突き詰めていくと私達の細胞の話に行きつきます。
そして、体内の真核細胞の細胞小器官のひとつ ミトコンドリアが元気に働き活発になると、私たちの身体も活性化します。
ということは ミトコンドリアが機能不全に陥ると命に関わる重篤な疾患に罹患する・・・ということにもなります。

細胞小器官は細胞にとって、臓器と体のような関係です。つまり、全体を動かし続けるために必要な労働力を分担しています。そんな特殊な構成要素の要がミトコンドリアなのです。

臓器移植はよく知られた概念ですが、細胞小器官移植はそうではありません

今回は、そんな命の発信源 ミトコンドリアの移植について紹介します。

細胞小器官
細胞内で独自の機能を持つ構造体の総称です。真核細胞では、ミトコンドリアや小胞体などの膜構造を持つ細胞小器官が発達しています。これらの細胞小器官は、細胞の活動に必要な様々な役割を担っています。

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臓器移植を超えたミトコンドリアによる心疾患のミトコンドリア移殖の可能性を紹介します。既製のミトコンドリアの改変、ミトコンドリアの一部使用、オートファジーの活性化が研究課題です。…
— 困ったカラダ (@Troubled_Body) September 9, 2025

1 ミトコンドリア移植とは
- 1.1 ミトコンドリア移植のメカニズム
- 1.2 研究と応用分野
2 ミトコンドリア移植の将来性
3 ミトコンドリア移植が心筋を回復させる仕組み
4 ミトコンドリアとオートファジー
- 4.1 オートファジーの劣化
5 追記

ミトコンドリア移植とは

ミトコンドリア移植は、細胞のエネルギー産生能力を回復させ、損傷した組織を修復する目的で行われる実験的な治療法です。

健康なミトコンドリアを体内の損傷した細胞に注入し、細胞の機能を改善させるもので、ショック、虚血、加齢性の病気、ミトコンドリア病への応用が期待されています。特に、大阪大学を中心とした研究グループは、ミトコンドリア病モデルマウスに健康なミトコンドリアを移植する治療法を開発し、全身の細胞機能の回復と寿命延長を示すことに成功しています。

ミトコンドリア移植のメカニズム

ミトコンドリアの注入
患者自身のミトコンドリア、または健康な細胞から抽出したミトコンドリアを、損傷した組織や患部に注入します。
機能回復
注入された健康なミトコンドリアが、損傷した細胞のミトコンドリアに吸収され、細胞のエネルギー産生を助け、細胞機能を回復させます。

研究と応用分野

ミトコンドリア病
リー症候群などのミトコンドリア病は遺伝子変異によりミトコンドリア機能が低下する疾患で、ミトコンドリア移植による全身の細胞機能回復が期待されます。

リー症候群 Leigh症候群 Leigh脳症
ミトコンドリアのエネルギー産生機能の異常が原因で起こる、小児期に発症する重篤な神経変性疾患です。発達の遅れや退行、筋力低下、けいれん、呼吸困難などの症状が徐々に進行し、生後6ヶ月までの早期発症は特に重篤な経過を辿ることが多いです。主な症状には哺乳不良、筋緊張低下、眼の症状、脳画像での特徴的な病変などがあります。原因となる遺伝子変異は複数見つかっていますが、有効な根治的治療法はなく、対症療法が中心となります。
症状
初期症状:哺乳不良、嘔吐、むずかり、絶え間ない泣き。
神経症状:発達の遅れや退行、全身の筋力低下、筋緊張の低下、けいれん発作、眼球運動の異常、視力障害など。
呼吸器症状:呼吸困難、呼吸不全。
その他:乳酸アシドーシス。

組織損傷と組織再生
ショック、虚血、熱傷などの組織障害や、加齢による細胞の脆弱性に対して、ミトコンドリアのエネルギー産生能力を高めることで、組織の再生や修復を促進する可能性があります。
代謝性疾患
メタボリック症候群の改善や、悪性腫瘍の抑制といった応用も考えられています。

ミトコンドリア移植の将来性

ミトコンドリア移植は、これまで治療が困難とされていた病態に対する革新的な治療法となる可能性を秘めています。
動物実験や一部の臨床実験から有望な結果が出ており、創傷治癒、脳卒中、心臓病、アンチエイジングなど幅広い疾患の治療に応用できると期待されていますがミトコンドリア移植はまだ研究開発の初期段階にあり、さらなる研究と技術的な課題の克服が必要です。

ミトコンドリア移植が心筋を回復させる仕組み

なぜ少量のミトコンドリア移植で心機能を改善できるのでしょうか？
患者の健康な骨格筋から損傷した虚血性心組織にミトコンドリアを移植すると、心筋が回復し、エネルギー産生が増加し、心室機能が改善されることが示されています。

約10年前、ボストン小児病院による先駆的な前臨床研究の後、心臓外科医たちは、先天性心疾患や虚血再灌流障害のある子どもたちのECMO離脱を支援する方法として、ミトコンドリア移植を試験してきました。

「ミトコンドリアを移植することで、回復の可能性がはるかに高まることに気づきました」

と医師は述べています。現在までに16人の子どもたちが自家ミトコンドリア移植を受けており、そのうち80%がECMO離脱に成功しました。これは、従来の離脱率が40%だったことと大きく異なります。

しかし、ミトコンドリア移植は懐疑的な見方に直面してきました。その理由の一つは、なぜそれが有効なのか誰も理解していなかったことです。

ECMO離脱
患者の呼吸・循環機能が安定し、肺機能や心機能が改善したと判断された場合に、ECMOの補助を中止してカニューレ（カテーテル）を抜去するプロセスです。

心臓外科の研究者であるメレロ＝マーティン博士が率いる研究は、5月1日付のNature誌に驚くべき説明を発見しました。移植されたミトコンドリアは、細胞にオートファジーを通して、機能低下したミトコンドリアを破壊するよう促しました。これにより、細胞はより良好なミトコンドリアプールを確保し、生体エネルギーと適応力を向上させることができます。この知見は、最終的に様々な心疾患の治療改善につながる可能性があります。

ミトコンドリアとオートファジー

ネイチャー誌に発表されたばかりの最新の研究では、ミトコンドリアの流入が細胞を「掃除」するスイッチ( オートファジー )を入れ、古いミトコンドリアを貪食して新しいミトコンドリアを作り出すことが示されました。ミトコンドリア移植は細胞の若返りに多大な貢献をしているようです。

この分野では様々な可能性を研究しています。例えば、あらゆる患者に使用できる既製のミトコンドリアの改変、ミトコンドリアの一部使用、あるいはオートファジーの活性化などです。

オートファジーの劣化

オートファジーはヒト細胞における一種のリサイクルシステムです。これは、不要で病的な細胞成分を分解し、他の場所でリサイクルする体の方法です。オートファジーが老化プロセスに関与しているという強力な証拠があります。
研究では、ヒトではオートファジー関連遺伝子の活性が加齢とともに低下することが示され、 オートファジー機能の低下は生物の老化を加速させます。これは、タンパク質と細胞成分の蓄積の増加だけでなく、病原体を分解する能力の低下が原因である可能性もあります。
オートファジーを刺激すると生物の寿命が延びるという十分な証拠もあり、老化プロセスにおけるオートファジーの重要性が強調されています。

オートファジーは空腹の状態が16時間を過ぎると機能がスタートし始めます。

【保存版】老化のメカニズム ※人はなぜ老化するのか?

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